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研究トピックス一覧

魚に首の骨(頸椎)はあるのか?―脊椎動物の共有形質 「背骨」の進化を探る― (大学院理工学研究科 川村哲規准教授)

2024/7/8

発表のポイント

マウスを用いたこれまでの研究から、さまざまなHox遺伝子が椎骨の個性を決定することが示されていました。今回、Hox遺伝子を破壊したゼブラフィッシュを多数作製し、どの椎骨に影響するかを調べました。

マウスで最前部の胸椎(肩の位置)を決めるHoxc6と同じ遺伝子をゼブラフィッシュで壊した結果、前方の椎骨の一部に異常が生じたことから、首の骨のように見えた椎骨は元々「胸椎」であったことが分かりました。

この研究から、哺乳類の殆どは頸椎を7つもつのに対し、魚は1つしかもたない可能性が示されましたことから、脊椎動物は陸上に進出した後、「頸椎」の数を増加させ、複雑な機能をもつ「首の構造」を発達させたことが示唆されました。

概要

脊椎動物のからだに共通してみられる背骨は、椎骨が連なった繰り返し構造をしています。ヒトの各椎骨は前方から、首の骨である「頸椎」、肋骨と接続する「胸椎」、そして「腰椎」、「仙椎」、「尾椎」と分かれています。魚にも肋骨があり、魚も「胸椎」をもっていることがわかります。では、魚に首の骨、「頸椎」はあるのでしょうか。この問いは、脊椎動物の「背骨の進化」を紐解くうえで非常に重要です。

埼玉大学大学院?理工学研究科 生体制御学プログラム 川村哲規 准教授と国立遺伝学研究所 前野哲輝 技術専門職員は、宇都宮大学?バイオサイエンス教育研究センター 松田 勝 教授、岩波礼将 特任准教授らと共同で、椎骨の個性をもたらすHox(ホックス)遺伝子を壊したゼブラフィッシュやメダカを多種類作製し、どの位置の椎骨に異常が生じ、椎骨の個性を決めているかを調べました。その結果、魚の2番目の椎骨は「胸椎」と考えられ、魚の最前部の椎骨のみが「頸椎」と類似した性質をもつ可能性を示しました。本成果は、発生生物学の専門誌 『Development』に6月28日付でオンラインにて掲載されました。

論文情報

掲載誌 Development
論文名 Hox code responsible for the patterning of 
the anterior vertebrae in zebrafish
 (ゼブラフィッシュの前方脊椎骨のパターニングを司るHoxコード)
著者名

Akiteru Maeno, Rina Koita, Hidemichi Nakazawa, Renka Fujii, Kazuya Yamada, Sae Oikawa, Taisei Tani, Mizuki Ishizaka, Koumi Satoh, Atsuki Ishizu, Takumi Sugawara, Urara Adachi, Morimichi Kikuchi, Norimasa Iwanami, Masaru Matsuda, and Akinori Kawamura

前野哲輝1、小井田理奈2、中澤秀道2、藤井蓮花2、山田一哉2、及川紗英2、谷 太晟2、石坂瑞樹2、佐藤こうみ2、石津克己2、菅原拓海2安達うらら2、岩波礼将3、松田 勝3、川村哲規2
1情報システム研究機構?国立遺伝学研究所
2埼玉大学大学院?理工学研究科 生体制御学プログラム
3宇都宮大学?バイオサイエンス教育研究センター

DOI 10.1242/dev.202854

用語解説

「Hox遺伝子群」
動物の発生において、からだに位置情報をもたらす(座標のような)役割をもつ重要遺伝子群。ショウジョウバエを使った研究で見出されたホメオティック遺伝子が端緒であり、ヒトをはじめとする脊椎動物においてHox遺伝子が存在することが示され、1995年に3人の研究者にノーベル生理学?医学賞が授与された。脊椎動物では、1~13番のHox遺伝子が並んだ遺伝子クラスターを形成する。ゼブラフィッシュでは、7つの遺伝子クラスターに合計49個のHox遺伝子が存在している。

「頸椎」 
一般的に、「胸椎」よりも頭部側に位置する椎骨。一部のナマケモノやマナティーを除き、ヒトやキリン、クジラをはじめ哺乳類では頸椎の数は7個である。一方で、鳥の頸椎の数は、ニワトリが14個であるように、11~25個と哺乳類よりも多い。また、両生類のカエルの頸椎は1つとされる。さらに、中生代に生息した首長竜のなかには、70個以上の頸椎をもっていたことが化石研究から示されている。

プレスリリース全文はこちらからご覧ください。

川村 哲規( カワムラ アキノリ)|埼玉大学研究者総覧

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