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ゲリラ豪雨を予測する最新の気象レーダを埼玉大学に10月設置(大学院理工学研究科 長田昌彦教授 共同研究)

2017/7/11

情報通信研究機構や東芝、大阪大学、名古屋大学が開発を進める最新の気象レーダが10月にも埼玉大学に設置されます。この最新のレーダは、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の課題「レジリエントな防災?減災機能の強化」の1つの研究開発項目「豪雨?竜巻予測技術の研究開発」に対応した研究開発課題「マルチパラメータフェーズドアレイレーダ等の開発?活用による豪雨?竜巻予測情報の高度化と利活用に関する研究」(研究統括:高橋暢宏)による成果の一つです。この共同研究には、先の4機関のほか、防災科学技術研究所、日本気象協会、首都大学東京、鉄道総合技術研究所、山口大学、埼玉大学が参加しています。

開発を進める「マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」は、従来のパラボラ型の気象レーダとは異なり、1辺約2mの正方形状の平面型のレーダです(写真1)。ゲリラ豪雨をもたらす積乱雲は、30分程度の非常に短い時間で急激に発達します。したがってゲリラ豪雨を予測して、さらに何らかの対策を行うためには、できるだけ早く観測して、これを解析し、さらに関係各所に伝達する必要があります。設置予定のレーダは、30秒ほどで3次元データを取得できる性能をもっています。さらに上下方向に振動する電波と、水平方向に振動する電波を送受信することで、雨粒の形状も観測することが可能な仕様になっています。

埼玉大学への設置は、理工学研究科の長田昌彦教授がこの共同研究に参加していたことから候補に挙がり、首都圏に位置し、近隣に高層ビルが少なく、電波環境がよいことから本学への設置が決まりました(写真2)。

写真1 MP-PAWRの模型(東芝提供)

写真2 設置場所からの眺望

このようにして得られた観測データを使って、積乱雲の予測モデルを高度化し、我々の手元に届くようにすることも大事です。この共同研究では、防災科学技術研究所と日本気象協会を中心にこの検討や実証実験を重ねています。

さらに、ゲリラ豪雨が予測されたときに、それをどのように活かすかも実践を踏まえて準備しておく必要があります。埼玉大学では鉄道総合技術研究所?山口大学とともに、豪雨予測の利活用の一つとして鉄道の運転規制のための自然災害の評価手法に関する研究の1つを担当しています。図はその例を模式的に示したものです。鉄道は雨量に係る指標に応じて徐行や運転中止などを行い、降雨後に安全を確認して運転を再開するなどの運転規制を行っています。しかし、鉄道は距離の長い構造物であるため線路上では雨が観測されていなくとも、ゲリラ豪雨時には沿線を含めた広い範囲での影響を考えていく必要があります。そこで、土砂災害や洪水の生じそうな場所を把握するとともに、実際の雨量予測に基づいて、避難誘導できる仕組みを考えています。

図 鉄道の運転規制への応用(概念図)

2020年には東京でオリンピック?パラリンピックが開催されます。埼玉大学へ気象レーダを設置することで、その会場予定地をほぼカバーできます。この共同研究では、開発したレーダの性能、解析技術の高度化、そして社会システムへの同化のデモンストレーションとして、屋外競技の実施判断に利用していくことを見据えています。ご期待ください。


【参考URL】

長田 昌彦(オサダ マサヒコ)|研究者総覧このリンクは別ウィンドウで開きます

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)課題「レジリエントな防災?減災機能の強化」研究開発課題一覧 このリンクは別ウィンドウで開きます

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