◆埼玉大学創立70周年記念事業◆「DNAからがんの性質を探る-ゲノム研究の進展とがんゲノム医療への応用-」埼玉大学連続市民講座part10「未来を照らす-知の最前線-」第6回を開催
2019/11/27
埼玉大学と読売新聞さいたま支局との共催による連続市民講座part10「未来を照らす-知の最前線-」の第6回を11月23日(土)に開催し、埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所の大平 美紀 主幹を講師に、「DNAからがんの性質を探る-ゲノム研究の進展とがんゲノム医療への応用-」と題した講演を行いました。
今回の講座は二部構成となっており、第1部の講演は、「ゲノムと遺伝子とDNAの関係」として、「ゲノム」、「遺伝子」、「DNA」とは、それぞれ何でしょうかという問いから始まりました。人間のゲノムは、染色体22対(1番~22番)と性染色体XまたはYからなるワンセットの染色体を指すこと。遺伝子は、主にヒトの体や機能を形作るタンパク質の設計図となっているDNAで、染色体の1.5パーセントにあたること。そして、DNAは染色体や遺伝子を構成している物質であり、A、T、 G、 C の4種類の塩基からなるとの説明がありました。
その後「がんはゲノムのキズからできる」として、ゲノムのキズの多くは、細胞分裂時のDNAコピーミスにより引き起こされることや、そのキズは、がん細胞増殖のブレーキとアクセルの役割を担う「がん抑制遺伝子」や「がん遺伝子」の変異であること、そのキズによってブレーキとアクセルの機能異常が生じ、がんが発生?進行することなどの説明がありました。そして、がん遺伝子の変異によって異常となったタンパク質の作用を抑制する「分子標的薬」が開発され、高い抗がん効果が得られたことにより、がんゲノム研究の重要性が増したことを説明されました。続いてゲノム医療研究の歴史を解説され、マイクロアレイや次世代DNAシークエンサーの開発により、ゲノム解析がより簡単になって多数のがん遺伝子を一度に解析することが可能となり、近年保険適用となった「がん遺伝子パネル検査」の実現につながったことが述べられました。
第2部では、埼玉大学大学院理工学研究科 菅沼 雅美教授をコメンテーターに、大平主幹との対談が行われました。第1部の講演後に会場から寄せられた質問票をもとに対談が行われ、「これから10年後のゲノム医療はどう変わっているか」の質問には「DNAシークエンサーの性能向上やAIの導入によりDNA解析がもっと簡単に受けられるようになるのではないか」との見解が述べられるなど、講演からより踏み込んだ内容について意見をいただきました。
当日は雨が降る中、約270名の方々に受講いただきました。ゲノム研究の進展という難しいテーマの講座でしたが、「DNAの実物を見ることができた」「とてもよく分かった」との声を多くいただき、参加いただいた皆さんの心に残る講座となりました。
講義終了後は、埼玉大学 山口 宏樹学長より閉会の挨拶があり、埼玉大学連続市民講座 part 10「未来を照らす-知の最前線-」は、全6回(うち1回は台風のため中止)の全講義を終えました。
2020年度も多くの皆様にお越しいただけるような講座を目指してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。
埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所
大平 美紀 主幹
大学院理工学研究科 菅沼教授(左)を迎えた
第2部の対談の様子
熱心に聞き入る参加者の皆様
山口学長の閉会の挨拶
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