2021/05/28
手のひらサイズの模擬人工衛星に先進技術と夢をのせて
宇宙工学サークルあかとき
2021/05/28
宇宙工学サークルあかとき
前代表 石崎大貴さん
理学部物理学科4年
(海城高等学校出身)
前副代表 田中悠豊さん
工学部機械工学?システムデザイン学科4年
(埼玉県立大宮高等学校出身)
前副代表 須田亮介さん
理学部物理学科4年
(さいたま市立浦和高等学校出身)
佐藤正騎さん
工学部電気電子物理工学科4年
(川越東高等学校出身)
皆さんは「CanSat(カンサット)」のことをご存じでしょうか?
CanSatとは、飲料缶サイズの模擬人工衛星のこと。宇宙工学の教育を目的に、実際の人工衛星に搭載される技術を使って製作するもので、コンパクトながら高い性能を有します。私たちは、そんなCanSatを製作し、その性能を競う競技会への出場を目的に活動するサークルです。
競技は、上空から落したCanSatが地上のゴール地点にいかに近づくことができるかを競う「ランバック」部門や、自分たちで設定した“ミッション(例えば、土壌を採取するなど)”をクリアする機能をもつCanSatを製作し、その達成度合いや独創性を競う「ミッション」部門などがあります。
いずれの部門でも、気球やクレーンなど使って、CanSatを高高度から降下させるところが競技のスタート。それ故、各ミッションを自律的に遂行させるための機能やプログラムを備えているのはもちろん、着地(場合によっては海面などへの着水)の際に壊れないことや着地後の動作の妨げになるパラシュートをうまく分離させるかなどが勝負のポイントになります。
開発や製作プロジェクトの第一歩は、CanSatが遂行する「ミッション」を決めること。特に「ミッション」部門では、コンセプトの独創性が重視されるので、どのような視点を製作すれば面白い機体になるのかを熟慮します。その後の設計や製作では、様々な課題に直面するのもしばしば――。それでも問題をひとつひとつ解消して、よい結果につなげられれば大きな達成感を得ることができます。
ものづくりの観点からいうと、開発サイクルが短いことが魅力の1つではないでしょうか? 例えば、ロボットや自動車などに比べると、サイズが小さいため、短期間で開発可能。だからこそ、4年間という限られた大学生活の中でも、失敗を恐れずにいろいろな挑戦ができるのです。
このサークルは、私たちが1年生の時に立ち上げたのですが、これまで4機のCanSatを開発することができました。一からアイデアを出し、機体を作り、実験を繰り返して、課題を改善する――そんな一連の開発サイクルを経験できるのは、大学生にとって貴重な機会になると思います。
私たちが主に参加する競技会は、例年8月に秋田県能代市で開催される「能代宇宙イベント」内のCanSat競技会と、3月に鹿児島県種子島で行われる「種子島ロケットコンテスト」のCanSat部門の2つ。この内、「種子島ロケットコンテスト」では、2021年の大会で優勝できました。
この年の「種子島ロケットコンテスト」は、中国竞彩网感染症の感染拡大の影響で、通常の競技とは異なっていて、オンラインによるプレゼンテーションによる審査で順位を決定。
審査では、気球を使ってCanSatを成層圏まで到達させ、放射線の計測をするプランを発表したのですが、プロジェクト計画の発表に終始しなかったことが評価されたのだと考えています。
実際に自分たちで開発した小型の放射線測定装置を搭載したCanSatによる実証実験を行い、そこで得たデータをベースにしたプレゼンテーションを行ったのです。なお、実証実験では、様々な大学の学生が参加するインカレのロケットサークルの協力を得て、CanSatを搭載したロケットを打ち上げましたが、実験は無事成功。満足いく結果となりました。
実は「種子島ロケットコンテスト」は、3年前に「ランバック」部門で初エントリーした際、着地後に機体が動かず、悔しい思いをした因縁のある大会。翌年はリベンジを胸に2機目を開発しましたが、中国竞彩网感染症の感染拡大により大会自体が中止に――。そして今回、優勝してやっと雪辱を果たせました。
また、文部科学省が主催する「サイエンス?インカレ」では、「種子島ロケットコンテスト」で優勝した機体に関する研究で「サイエンス?インカレ コンソーシアム賞(関電工賞)」と「石井浩介賞」という栄誉ある賞をいただくことができました。コロナ禍で活動が制限される中、コツコツと取り組んできたことがこのような形で評価されて、本当にうれしいです。最初は7名でスタートしたメンバーも、今では後輩たちを合わせて20数名になりましたが、私たちは宇宙工学に関する活動をしているからといって、理系の学生のみが参加できるサークルではありません。柔軟な発想のためにも、多様な学生の参加が必要です。ぜひ文系の学生にも参加して欲しいと思います。
例えば、ドローンや気球を飛ばす際、航空法などの規制は無視できません。しかし、そのようなことをリサーチするのは、私たち理系の学生にとっては苦手分野。どんな学生でもきっと得意分野を活かせるシーンがあるでしょう。
純粋に競技に参加する楽しさや大会に参加するために、種子島や能代など、同じ志を持った仲間と旅する楽しさのほか、先進的な技術を使った“ものづくり”に携わる喜びも味わえるのが、CanSatの醍醐味です。少しでも興味が芽生えたら、気軽に話を聞きに来てください。