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2022/07/15

社会との関係性が高まる美術をより身近に感じてもらいたい!

教育学部2004年度卒業生 増田美沙さん

Profile

埼玉県立蕨高等学校 教諭増田美沙さん

埼玉県立浦和第一女子高等学校出身
2005年3月 埼玉大学教育学部学校教育教員養成課程教科教育コース美術専修卒業
2007年3月 埼玉大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了
2007年4月 埼玉県立三郷高等学校 教諭着任
2012年4月 埼玉県立蕨高等学校 教諭着任
現在、国際交流部 主任

埼玉県蕨市にある埼玉県立蕨高等学校は、「グローバルな視点を持ち次世代のリーダーとして活躍できる人を育てる」というミッションを掲げる県内有数の進学校。1957(昭和32)年の開校以来、数多くの優秀な人材を輩出してきたことで知られています。そんな同校で美術を教える増田美沙 教諭は、埼玉大学の卒業生。アーティストとしての活動も続ける増田さんに、仕事のことや創作活動のこと、そして埼玉大学のことを伺いました。

美術教師としての使命は
美術文化を生徒と共に作っていくこと

美術教育の目的は、美術作品を制作する技術を磨くことだけではありません。

例えば、ビジネスの世界で、アーティストの思考プロセスを取り入れて創造力を高める「アート思考」という方法が脚光を浴びているように、美術と社会の結びつきは一層強まっています。それ故、美術を愛好するための心情や能力を養うことで、生活や社会の中の美術とかかわる資質を育むことも美術教育の重要な目的の1つだといえるのです。

いまはコロナ禍の影響で開催を見送っていますが、美術に対する生徒の関心を高めるために、生徒が自らの作品を展示する展覧会を開催したり、難解といわれがちな現代アートの鑑賞活動などを実施してきました。前者は制作者、イベント運営者、鑑賞者という様々な立場で美術にかかわる体験ができ、後者は体験型の現代アート作品の鑑賞をグループで行うことで、話し合いをするだけでなく、体を動かし楽しみながら鑑賞するという能動的かつ積極的な鑑賞態度の育成を目的としています。たとえ、将来、専門的に美術にかかわらなくても、このような活動を通じて、美術の面白さや、社会とのつながりを知ってもらいたいのです。

さて、現在、学校教育を取り巻く状況は激しい変化の渦中にあります。

例えば、学校教育ではICTの活用が急速に進んでいます。教員としては、そのような変化を積極的に受け入れながら、自分自身も変わっていく必要があると実感しているところです。

それは美術教師としてだけではなく、他の仕事を行う上でも同様。ちょうど留学プログラム参加者の支援などを行う国際交流部の主任を務めていますが、やはりそのような意識をもつことは必要不可欠だと考えています。

プッシュピンドローイングという独自の手法で描き出す光と影の世界

教職と並行して続けているアーティスト活動では、須藤美沙という名前で作品づくりに取り組んでいます。

現在、主に制作しているのは、画びょうなど、ピン状のもので紙に穴をあけて、図像を浮かび上がらせる「プッシュピンドローイング」による作品。これは私独自の表現方法で、光の当て方を工夫することで陰影がつき、独特な立体感や質感を与えられるのが特徴です。

プッシュピンドローイングを始めたのは、約7年前。それ以前に取り組んでいた絵画やドローイングと根本的な違いは、絵の具を使わないことです。

作品のテーマは、天文やギリシャ神話などが多いのですが、そのモチーフの1つに宇宙の画像があります。宇宙の画像というのは、目に見える光だけでなく、目に見えないもの、例えば赤外線や紫外線等の光が専門家の手によって着色されているものになるのです。それをピンの穴に置き換えることで、色をなくし、刷り込まれたイメージを一旦取り去る――。すると、印象は変わりますし、紙の裏から光を当てれば、それまで見えてなかった光や影の部分が見えてきます。

以前から「真実は1つではない」という感覚をもってきましたが、裏側を見たり、隠されているものに光を当てることを表現できるプッシュピンドローイングで、そのような意識を具現化しようというところからスタートしているのです。

アーティストとしては、できるだけ長く作品をつくり続けていきたいですね。それは、この後、自分がどのような作品をつくるのか、その時になってみないと分からないから、5年後10年後の自分の作品を見てみたい。作品を作り続けることが、アーティストとしての態度やスタンスを形成していくのだと思います。

幅広い分野が学べる自由さが
教員養成課程で美術を学ぶ魅力?

美術の道にはごく自然に進んだ印象です。父が広告デザイナーだったこともあって、物心ついた頃には、デザインや美術に対する興味は芽生えていたように感じます。

美術部に所属していた高校時代には、美術大学への憧れもありましたが、子供たちと一緒に作品をつくり上げたり、子供たちに何かを伝えることに興味があったので、教員として美術に携わりながら、作品をつくっていくことを志しました。そして、地元で、教員養成機関としての長い歴史と実績がある埼玉大学教育学部への進学を決めたのです。

ちなみに、実家は、母が小学校の養護教諭を、祖父が小学校の校長をしていたという教育者一家。いま思えば教職を目指したのも、自然な流れだった気がします。

美術大学では、日本画なら日本画、油画なら油画、彫刻なら彫刻というように、入学する際に専門分野を決めて、在学中はその道を極めていくことがほとんどだと思います。その点、教育学部の美術教諭養成課程では、絵画、彫刻、デザインなど、幅広い分野を学びます。

私自身、油彩から鉛筆によるドローイング、プッシュピンドローイングと表現方法が変わっていったのも、大学時代にそのような経験をしたからかもしれません。そう考えると、埼玉大学の教育学部芸術専修への進学は、特定の分野にこだわらずに様々なことを吸収しながら自分なりの表現方法を確立したい人にはもってこいなのではないでしょうか?

埼玉大学では、大学と大学院の合計6年間を過ごしましたが、先生方との距離が近く、学生同士の雰囲気もよかった印象です。勉強も、研究も、創作活動もしやすかったですね。

現在は、教職支援室もあり、教員を目指す学生に対するサポートもより充実していると聞いています。教職を目指す学生にとっては、おすすめできる大学なのは間違いありません。ぜひ埼玉大学に入学して夢を叶えた暁には、ぜひ一緒に教育現場を盛り上げましょう。いまから楽しみに待っています。

大学院時代は、心理学の観点で美術を語るというユニークな切り口で研究。絵画表現における記憶の作用の解明に取り組んだといいます。また研究の一環として、画材にも注目。「許可をもらって大学構内の松の木からすすをとって、黒色の絵の具をつくったのは、よい思い出です」と増田先生。写真はその時の絵の具

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